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【栃木県】合戦場遊廓を同定する

合戦場遊廓

全国遊廓案内の栃木県の項目の続きです。

全国遊廓案内を見ていると、「合戦場(かっせんば)遊廓」なんて言う、ちょっとおどろおどろしい名称の遊廓の名前が書かれていて、ちょっと気になったわけです。

全国遊廓案内

合戦場町遊廓 は栃木縣下都賀郡合戰場町にあつて、鐵道では兩毛線、栃木駅で下車し、西方約三里の地點にある。驛から自動車の便があるので大した不自由を感じない。現在妓樓六軒、娼妓約三十人位居り、全部東京式過し制、店は陰店制である。娼妓は勿論居稼ぎ制だ。遊興費は最低一圓五十錢位より最高御定りは三圓五十銭位迄の様である。

『全国遊廓案内』,日本遊覧社,昭和5. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1453000 より

両毛線の栃木駅。そこらら西に12キロ前後だと、記述通りであれば「岩船駅」付近ということで微妙な書き方。
これだと、駅そばで自動車の便は不要ですよね。

行政区分を調べる

一旦、「栃木縣下都賀郡合戰場町」なる場所がどこかを調べてみるのが先。
少なくとも、合戦場町なるものは現代にはないので、下都賀郡から見定めましょう。

1889年(明治22年)

家中村 ← 合戦場村、升塚村、家中村、平川村(現栃木市)

Wikipedia, https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8B%E9%83%BD%E8%B3%80%E9%83%A1 , 2024年10月4日確認

Wikipediaによると、合戦場町ではなく、合戦場村。明治22年に家中村に合併となっているのですね。さらに

1955年(昭和30年)

4月1日 – 赤津村・家中村が合併して都賀村が発足。(5町15村)

1963年(昭和38年)

11月3日 – 都賀村が町制施行して都賀町となる。(9町)

2010年(平成22年)3月29日 – 大平町・藤岡町・都賀町が栃木市と合併し、改めて栃木市が発足、郡より離脱。(3町)

Wikipedia, https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8B%E9%83%BD%E8%B3%80%E9%83%A1 , 2024年10月4日確認

家中村から都賀村、都賀町を経て栃木市。という流れで現在は栃木市になっているようです。そうであれば、東武日光線の「合戦場駅」が少なくとも該当附近であると推測できます。

それが正解なら、「西方約三里」ではなく「北方約一里」が正解。
しかも、全国遊廓案内は昭和5年に出版されているわけなのですが、合戦場駅は昭和4年に開業しているのでこっちから案内してない意味もよく分からんですよね。

まぁ、「全国遊廓案内」っぽいといえばそれっぽいんですが。

大日本職業別明細図

家中村の文字でふっと昔見た地図が頭に浮かんできたので、ちょっと確認。

大日本職業別明細図

ビンゴですね。合戦場駅の南方その一角に「遊廓」の文字が見えます。なるほど、街道筋より一本線路側に入った附近にあったというのがこれから読み解けます。

現代の地図で見ると確かにそれっぽいところに異様に太い道の一角が見当たります。

ただ、全国遊廓案内では、合戦場には6軒あったとの記述です。地図中では8軒分囲っています。
ちょっと深く調べないとわからないけれども…遊廓というのであれば入り口に柱を立てていただろうと推測するとこの方形の区画が該当になると思われる反面、地図上の文字を追う限りは入り口と思われる付近の東側2件は楼閣とは思えません。
歴史的な流れで廃業しただけなのか。全国遊廓案内の数字が間違っているのか。この情報だけだと、何とも言えないですね。

地図・空中写真閲覧サービス

概ねの場所まで確認できたので、いつものように過去の航空写真から状況確認です。

地図・空中写真閲覧サービス より

整理番号 MKT612
コース番号 C19
写真番号 16
撮影年月日 1961/05/13(昭36)
撮影地域 栃木
撮影高度(m) 1900
撮影縮尺(アナログ) 10000
数値写真レベル(デジタル)
地上画素寸法(cm) 152.020
カメラ名称 RC8
焦点距離(mm) 152.400
カラー種別 モノクロ
写真種別 アナログ
撮影計画機関 国土地理院
市区町村名 栃木市
備考
ワンストップサービスの可否

で、「大日本職業別明細図」で遊廓とマークされていると思われている場所を見ると、航空写真でもそれっぽい雰囲気になってますね。

地図・空中写真閲覧サービス より

この区画。現代の地図に当てはめていくとこんな感じでしょうか。

合戦場遊郭想定地

ここから先は、地誌や過去の住宅地図などの追加資料がないとわからんですねぇ。でも、この辺りの資料は国会図書館とかにも見当たらないので。現地の図書館とかに行かないとわからんですねぇ。

使用した資料

『全国遊廓案内』,日本遊覧社,昭和5. 国立国会図書館デジタルコレクション
地図・空中写真閲覧サービス(MKT612-C19)(2024年10月05日確認)
東京交通社 編『大日本職業別明細図』,東京交通社,昭12. 国立国会図書館デジタルコレクション(2024年10月05日確認)

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