前回の調査(【静岡県】相良町遊廓(牧之原市)を同定してみる)にて、大正~昭和期に存在した貸座敷3軒の場所の同定を試みました。
場所の同定の深掘り
調査時には、『城下町相良区史』の記述から場所を絞り込んでいます。
当時の絞り込みの結果としては、具体的には下記のようになりました。
- 蔦屋: 相良の新町、今の相良パーキングの所。
- 弦波楼: 相良字北側九〇ノ二、今の中川玩具店の所。
- 岡本楼: 相良町北側一〇五番地。
このような情報まで到達しており、番地がある場所についてはマップルの情報で具体的な場所まで行きつきましたが、蔦屋については場所がわかっていませんでした。
これらについて、追加で情報を探してみることにしました。
ゼンリンの住宅地図 相良町・御前崎町・浜岡町 昭和51年
国立国会図書館にて、相良町のもっとも古い住宅地図を確認。
ゼンリンの住宅地図 相良町・御前崎町・浜岡町 昭和51年
こちらを確認すると、静岡銀行相良支店の斜め向かいに「中川玩具センター」の文字。
前回同定した場所を裏付ける形になっています。
また、「旅館 山本」ともあり、ここも場所を裏付ける形です。
ただ、この年代の地図をいくら探しても「相良パーキング」は見当たらない。
ゼンリンの住宅地図 相良町 ’91
そうなると、このパーキングになったのはつい最近であることを想定。もう少し新しい地図を参照してみます。
EPSON MFP image
比較的新しい地図を見たら一発で発見。
「相良パーキング」は先行で見つけた2区画の近隣で発見。
この場所をストリートビューで確認してみます。
駐車場とちょっとした公園が設置されています。
これ、なんか見覚えがあるなと思って確認。
『Shokokai : 地域を結ぶ総合情報誌』, 全国商工会連合会,1998年2月 国立国会図書館デジタルコレクション より
まさにこの公園の写真が記載されています。しかもよく見ると、キャプション内に「相良パーキング」の文字もしっかりと書かれていました。
そして本文には、次のような記述があります。
ポケットパークは駐車場の一角に設けられている。木が植えられ、ベンチや水飲み場、電話ボックスが設置された小さいながらもゆとりを感じさせる空間を形作っている。このポケットパークの敷地三〇〇坪は、商店街の有志が三〇〇〇万円を拠出し、先行取得しておいたものである。
『Shokokai : 地域を結ぶ総合情報誌』, 全国商工会連合会,1998年2月 国立国会図書館デジタルコレクション より
とあり、昭和59年(1984年)に始まった「しんまち遊ロード商店会」の整備事業とともに用意されたものであることがわかります。
古い住宅地図に表れてこない理由はそこにあったようです。
まとめてみる
今回調査して判明したもの、確証が得られたものを地図上にマッピングしてみるとこうなります。
廓の形状を呈しておらず、街道沿いに並んだ形状ではあるものの、一定の小さなエリアに固まっていたことがわかります。
ストリートビューで確認する限り、特に残渣と言えるものは残っておらず、土地の区画割りにだけ、その記憶がある状況。
現地踏査をしても、特に成果はなさそうだという事が確認できました。
使用した資料
ゼンリンの住宅地図 相良町・御前崎町・浜岡町 昭和51年, 昭和51年7月, 日本住宅地図出版株式会社, 国立国会図書館蔵
ゼンリンの住宅地図 相良町 ’91, 株式会社ゼンリン, 1990年9月, 国立国会図書館蔵
『Shokokai : 地域を結ぶ総合情報誌』, 全国商工会連合会,1998年2月 国立国会図書館デジタルコレクション より
